我の眠りを覚ますものには、天誅を!
残暑厳しい毎日だが、朝晩はめっきり過ごしやすくなったように感じる。
特に、少し肌寒さを感じる朝の布団の中は、えもいわれぬ離れがたさがある。
まるで子猫の様に掛布団にくるまり、ぬっくぬっくするあの時間だ。
これから寒くなるにつけて、2度寝の恐怖が付きまとうが、そんなことは些細なことだ。
なぜなら、寝起きの布団の中こそが、楽園(エデン)であると思うからである。
そんな極上の時間を眠りの中で味わっていると、
ぱちり!
寝室の電気がついた。
そう、恐れていた時がついに、、、家人の誰かが起こしに来やがった!
寝ぼけた頭でも気配は感じ取れる。
こそこそとした侵入者は、何やら吾輩の背中をつつきだした。
「起きて!」
娘だった。
これが妻だったら。三回起きてというまで狸寝入りするのだが、娘にはげろ甘な吾輩は起きてやることにする。
振り向くと、吾輩愛用の鉤型のマッサージ棒で背中をつついていた娘が、にへらっと笑っている。
なかなかにシュールな目覚めである。
しかし、何故娘が起こしに来たのかと訝しんでいると、
「なんか、変な寝かたしたのか肩が凝ってるの。ほぐして!」
………よし、極上の時間を失ったが、至福の時間を過ごさせてやるとしよう。
ちなみに、私はマッサージにはうるさい!
生来持ち合わせているたぐいまれなる想像力を活かし、骨格や筋肉の動きを想像できてしまうという変な特技を持つ吾輩は、マッサージがうまい!
しかし、自分では自分を十全に施術することができず、悶々としている。
だから娘は吾輩を起こしに来たのであろう。吾輩のマッサージを受けるために!
うつぶせに寝転んだ娘が暴れない様に馬乗りになる。
肩から首筋に欠けて軽く撫でてみると、ふにょんふにょんである。全然凝っていない!
ただ、痛いというからには、普段よりは固くなっているのだろうと、肩と首周りの緊張をほぐしていく。
ある程度これで十分と思えるほどほぐしたのち、吾輩はさらなる雌伏の時間を過ごさせるべく嫌がらせを開始する。
「あかん、、だんだん眠くなってきた……」
「ちょっと、そんな状態でやめて!いやーーーっ!」
この時の状態は首と肩の筋肉の隙間に親指を差し込み、すこーし深い所をほぐしていた。
そう!
ごりっ
っが非常に置きやすい状況なのである。
このごりっ、は、意識の隙間に滑り込むように発生する。マッサージに慣れていない人が施術すると、ちょうど筋の上を指圧した時に、指圧された筋がいやん!と逃げていくやつである。
実際に音がしているわけではない。ないのだが、された方もした方にも共通して、ごりっ!とした感触がある。そして、した方にはないが、された方には何とも言えないえもいわれぬ痛みが発生し、しこりを残す。そう!このごりっ!の本当の恐怖はその残ったしこりにある。
娘はこの ごりっ!を恐れ、うろたえたのである。
しかし、こんなこともあろうかと、馬乗りになっているのである。ちょっとやそっとでは逃げ出せない。
溜飲を下げた吾輩は、さらに溜飲を下げるべく蹂躙を開始する。
「お客さん、サービスしときますね~」
と、ノリノリで背筋の真ん中あたりをぐりぐりしてやる!
「ぎゃーーーー~~~~~~~-~^っ」
高らかに響く娘の絶叫!
いい気味である!
経験のある人もかなりいると思うが、このぐりぐり結構こそばゆいのである。
必死に抵抗を試みる娘だが、無慈悲なおやじが乗っているので逃げ出せない。
しまいには、叫びながら頭を左右にぶんっぶんっと振り出した。
ちょっと怖い!けどオモシロイ!もちょっとやっとこう!!
ぐりぐり 「ぎゃーーーー~~~~~~~-~^っ」
段々振り子が早くなってきた。最初はムーミン谷に住む〇ョロニョ〇さんのような感じだったのが、超高速メトロノームのような感じになってきた。
かなり怖い!この辺でやめとこう。
ぐったりと疲れた感じの娘だが、
「あー楽になった。ありがとう」
と、素直に感謝をくれた。
本日も一日一善である