町民運動会!

昨今、縮小の一途をたどる所属地域の町民運動会が開催された。
毎年、秋に行われるこの運動会は今年で、三十?回目らしい。

今の地域にお世話になって、10年足らずになるが、当初は終日行われていたこの催しも、ここ数年は昼過ぎには終了する。
前日に本部席用のテントと運動会の必需品である万国旗を設置し、翌日の朝8:30ごろから開会、昼過ぎには終了し、当日中に片付けを終えることになる。

なかなかにあわただしい感じがするが、地域の催し物が減り続けている昨今では、貴重なふれあいの時間だ。

さて、なぜこのタイトルで記事を起こしたのかというと、私が大の負けず嫌いだからである。男の子なのだ!

地域住民の為の運動会ということもあって、競技内容はいろいろと工夫が凝らされている。
毎年参加していると毎度おなじみな感じがするが、幅広い年齢層をカバーした素晴らしい競技が多い。
しかも、順位に応じて各競技毎に景品が頂ける。

参加費用は、自治会費を通して支払われているので、参加しなければ損をする。
どうせなら、勝ちたいと内心燃え上がる炎なハートを悟られぬようクールに振舞うことにする。

だが、しかし、個人競技はない!
問われるのは各地域のチームワークなのだ。自身の所属するチームが勝たないと1位の景品はもらえない!
競技の中には、単純に運任せのものもあるが、工夫次第で上位に食い込めるものも多い!
その中の一つが、満水リレーと呼ばれる種目だ。

各地域が苦心の末に10人を選抜し、かわいらしいキティちゃんのマグカップを用いて一升瓶へ水を注ぎこみ、一番早くあふれさせたチームの勝利という競技である。
変人を自称する私は、サクッと満水リレーの勘所を分析する。

この競技で勝利を得るには、2通りのパターンがある。まず一つ目は多少こぼれることを厭わず、高回転を実現し注ぎ込む回数を増やすことで勝利を得る方法。二つ目は極力零さずに注意をし、ロスなく注ぎ込み最少回数を目指す方法だ。
超高性能な脳内勘ピュータをフル稼働させ、導き出した最適解は後者の方法だった。

意外と思われるだろうが、この競技はかなり巧妙な意識誘導が行われている。
皆さんはお気づきになるだろうか?

この競技の最大の分岐点はマグカップの持ち方である。

このマグカップが曲者なのだ。地球上に数多ある国の中でも先進国に位置する我ら日本国民の民度は非常に高い。
持ち手のついたコップを渡されると、マグカップの持ち手を持ってしまうのだ。
渡されたのが紙コップであるならば、そんな現象は起きない。
水がいっぱいに入ったマグカップの取っ手を持つと当然おててはプルプルする。そのような極限状態にさらされたまま可能な限りのスピードを出し、バシャバシャとカップの中の水を零しながら、一升瓶の細くすぼまった口先から残った水を注ぎこむ。当然注ぎ込むときも取っ手を持っているので、もちろん、おててはプルプルのままである。
この巧妙に仕組まれた意識誘導に気づかないと、せっかく汲んだ水の実に半分近くをグラウンドに散水することになるだろう。

各チーム、スタート位置にステンバイし、程よく距離が開いたところで、皆を呼び必勝法を授けることにする。
すなわち、持ち手を持たないことである。
話をすると、皆さん民度の高い日本人であるので、ことごとく巧妙な罠にはまっており、うんうん頷きながら熱心に耳を傾けてくれている。
横から鷲掴みではなく、カップの上部から五指の腹に引っ掛けて吊り下げるように持つ。
ホンダが誇るスーパー〇ブの荷台についている出前業務御用達のからくりのようなイメージだ。
引っ掛けるように吊り下げることで、程よく緊張が取れ、プルプルの抑制効果がある。しかも上下の振動をある程度吸収してくれるので、中身もこぼれにくい。

更にもう一つ。
プルプルしなくなったおててでなら、一升瓶に注ぎ込むときの奥義が使用可能だ。
前述の巧妙な意識誘導に罹ったままだと、どうしてもカップの縁を注ぎ口に近づけてしまう。
しかして、マグカップは口が広い。マグカップからこぼれ落ちた内容物は最初はかなり広い範囲からこぼれ落ちていく。そう!一升瓶の口よりもはるかに広い幅で、だ。
なので、注ぎ込むときはお湯を回し入れるバリスタの様に少し高い位置から注ぎ込む。こうすることで、水の表面張力によりマグカップから放たれた水は徐々にすぼまり、余すところなく注ぎ込まれていくという寸法である。

結果は、見事我がチームが一位を獲得した。それも圧倒的なスピードで他のチームと比べても2,3人分少ない回数で満水となった。
うむ、良い仕事をした。

日々、ストレスにさらされる現代人だからこそ、少しの息抜きを積極的に取って欲しいものだ。